「法的整理か私的整理か」

今回は,「法的整理か私的整理か」を選択する際,考えるべきメリット・デメリットについて,ご説明したいと思います。
前回の記事でも触れたように,法的整理と私的整理は,法に基づき,裁判所の介在のもとで手続がすすめられるか否か,で区別されますから,基本的にはこれに応じたメリット・デメリットが認められることとなります。

法的整理のメリットとしては,法に則って裁判所の関与のもとで手続がすすめられることによる,「公平性」や手続の「安定性」があげられます。法的整理においては,債権者の一部が反対していても,多数決のもとで,全債権者に対して公平に対応することが可能です。
逆にデメリットとしては,事実が公表されることによる,「事業価値の毀損」があげられます。倒産の情報が拡散することによって,再建へ致命的なダメージを受けてしまう可能性が高いことは,法的整理の大きなデメリットです。また,手続が複雑で柔軟性に欠けることや費用の負担が大きいことも,デメリットとなります。

他方,私的整理のメリットとしては,私的,つまり当事者間の合意によって手続がすすめられることによる,「柔軟性」や「迅速性」があげられます。また,「秘密保持」によって取引の継続を期待できることもメリットとなります。
逆にデメリットとしては,私的,すなわち法に定められた手続がないことによる,手続の「不安定性」があげられます。もっとも,この点に関しては,前回ご紹介した私的整理に関するガイドライン等が作成され,対応が行われているところです。また,私的整理の成立のためには,対象となる債権者全員の同意が(事実上)必要となることもデメリットとなります。

実務上は,私的整理の方が割合として多く,実際にも,どちらを選択するか検討する際は,まずは私的整理ができないかという観点からの検討が行われることとなります。

 

昨年より報道されているタカタの事業再生についても,今回のテーマである「法的整理か私的整理か」が問題となっています。昨年11月時点より,経営者側が,製品の安定供給を続けること等を理由に,私的整理を強く希望しており,その方向での調整を行っているとの報道がされていましたが,その後,先月1月中頃に,スポンサー候補から,法的整理による解決の提案が行われたとの報道があったところです。
この件については,既に世界的に大きく報道が行われていることから,前述の「事業価値の毀損」は現時点では大きな問題となりませんが,大企業の事業再生の場面において,「柔軟性」の高い私的整理を選択して,事業を継続していくのか,それとも,「安定性」の高い法的整理を選択して,再建を「確実」にするのか,という今回のテーマがまさに現在進行形で問題となっている事案ですので,この記事を頭の片隅においたうえで,今後の動向にご注目頂ければと思います。